ネントレのやり方とコツ

杉山 剛
医学博士 日本小児科学会指導医・専門医 日本アレルギー学会指導医・専門医 日本睡眠学会専門医

「ネントレ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?赤ちゃんが一人で眠れるようにするための「ねんねトレーニング」や「寝かしつけトレーニング」のことをネントレと言います。最近の育児界隈では、従来の寝かしつけよりもネントレに注目が集まり始めています。ネントレのメリットやデメリット、ネントレはいつからできるの、ネントレの方法などをご紹介します。

ネントレとは?

「添い寝をしないと、寝てくれない」「寝つくまでにすごく時間がかかる」など、赤ちゃんが思うように寝てくれないのはよくあることです。赤ちゃんを寝かせるのに時間がかかってイライラしたり、自分の睡眠時間が削られてストレスが溜まったり、赤ちゃんのねんね問題で疲れているママパパは多いのではないでしょうか。睡眠が十分でないと、体や脳の発達に影響があると言う報告もあるので、赤ちゃんがぐっすりと眠ってくれないと心配ですね。

昼寝の時間が多すぎる、逆に昼寝が足りなくて疲れて興奮して、夜眠れない、日中に十分に体を動かしていないなどが、赤ちゃんが寝つけない理由として挙げられます。

ネントレとは、授乳や抱っこなどの寝かしつけを最小限にして、赤ちゃんが一人で眠れる力を育てるトレーニングです。赤ちゃんが夜にしっかりと長い時間、自分の力で眠れるようになることを目的としています。ここでは日本の生活習慣や住環境にあわせた、無理をしないネントレの方法を見ていきましょう。

ネントレのメリット・デメリット

海外では赤ちゃんが小さい頃から両親と別々の部屋で寝る「ひとり寝の習慣」が一般的です。一方、日本やアジアでは「寝かしつけの文化」が主流です。赤ちゃんの頃から一人で寝かせるなんて、と抵抗を感じる人もいるでしょう。住宅事情や文化、習慣の違いがあるので、海外のやり方と日本のやり方、どちらがいいとは一概に言えません。まずはネントレを試すメリットやデメリットを見ていきましょう。

メリット

デメリット

生活リズムが整う

赤ちゃんが泣き続けるのを聞いているのが辛い

朝までしっかりと質の良い睡眠がとれる→日中に機嫌がよくなる

 

夜泣きがなくなる

 

夜中に目を覚ましても、一人で再び眠れる

 

ママパパの睡眠時間が確保できる

 

 

ネントレはいつからするべき?

ネントレはいつから始めたらいいのでしょう?ネントレの開始時期に、必ずしも何ヵ月からと言う決まりがあるわけではありません。赤ちゃんの月齢や成長に合わせて判断します。本格的にネントレを始めるなら、生後5~6ヵ月以降がいいタイミングでしょう。生後5~6ヵ月頃から、赤ちゃんの寝る時間や起きる時間、お昼寝の睡眠サイクルが整ってくることが理由です。

生後4ヵ月頃までは、赤ちゃんは数時間起きては再び眠るという睡眠サイクルを繰り返します。生後4ヵ月までは同じ部屋で寝て、赤ちゃんの様子を見守ってあげましょう。生後5~6ヵ月以降になれば連続して6~8時間眠るようになります。また、夜間の授乳回数も減ってくるのもこの頃です。

成長や睡眠サイクルは赤ちゃんによって違います。赤ちゃんの睡眠時間をアプリなどに記録しておくと、ネントレ開始のタイミングがつかみやすいですね。

ネントレは生後5~6ヵ月頃から始めるのが理想ですが、それより遅くなったからと言って絶対にできない、と言うわけではありません。1歳を過ぎてからネントレを始める場合、眠る前に本を読む、スキンシップをするなどの入眠儀式や言葉かけを重視するようにしましょう。1歳を過ぎてからのネントレは少し時間がかかるかもしれませんが、あきらめないで根気強く続けることが大切です。

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ネントレのやり方

ネントレは、日本やアジアでは、添い寝の文化や住宅環境などから、親子が良い睡眠を取れるようにするための睡眠環境づくりや昼寝のタイミング、起床や就寝時間などの生活リズムを整えることを指します。

ネントレには、様々なやり方があります。海外のように赤ちゃんを一人で寝かせて、泣いても泣かせっぱなしという方法や、眠るまでそばで付き添ってあげる方法などがあります。どのやり方がベストと言うものはなく、赤ちゃんの性格や発達に合ったやり方を実践することがポイントです。

ここでは、赤ちゃんとママパパの負担になりにくい、日本式の無理のない範囲でのネントレの方法をご紹介します。

音、光、室温を確認する

赤ちゃんが眠る寝室の環境はどうでしょう。音、光、室温の3つの眠る環境を今一度、確認しましょう。音に敏感な子どもだと、わずかな生活音でも気になってしまうものです。時計などの音が出るものは眠る部屋に置かないようにしましょう。光に敏感な子だと、文字が光るデジタル時計でも寝つけないことがあります。部屋をできるだけ暗くしてあげることで、眠りやすくなると言われています。また、寝室の室温も大切なポイントです。体温調節機能が未熟な赤ちゃんが眠る時の適切な室温は、20~23℃くらいだと言われています。また、遊びたくなってしまうようなおもちゃなどは、寝室には置かないようにしましょう。

月齢や年齢に合った睡眠リズムを確認する

ネントレは、生活リズムを整えるためのプロセスとも言えます。睡眠環境に続いて生活リズムが大切なポイントになります。乳幼児から小学校に入るまでの子どもの夜の睡眠時間は、昼寝をのぞいて10〜12時間が理想的です。

また、昼寝をしすぎてしまう、逆に昼寝が足りないために疲れて興奮し、夜眠れなくなってしまうことも。子どもに必要な睡眠時間は、年齢によって違ってきます。月齢ごとの理想的な睡眠時間をまとめました。

月齢/年齢

睡眠時間

睡眠サイクル

生後3ヵ月

14~15時間

睡眠時間は1日のうち14~15時間とやや短くなります。1回の睡眠で3~4時間連続して眠るようになるので、お昼寝の回数も1日2~3回程度に減ってきます。生後4ヵ月くらいになると、次第に夜にまとめて長く寝るようになってきます。

生後6ヵ月

13~14時間

睡眠時間は1日のうち13~14時間。6~8時間連続して睡眠を取るようになり、昼と夜の区別がはっきりしてきます。お昼寝は1回2~4時間で、1日に1~2回程度とります。また、生後9ヵ月頃には、睡眠時間の7~8割を夜間に取るようになってきます。

1~3歳

11~12時間

1日のうち11~12時間程度となり、ほとんど夜間に睡眠を取るようになります。お昼寝は少なくなり、1.5~3.5時間の睡眠を1日1回取る程度です。午前中に眠たそうにしているときは、夜寝る時間を20~30分程度早めてみてもいいかもしれません。

 

子ども寝かせて部屋を離れる

まだ眠っていないのに親が部屋を出ると、子どもが追いかけて布団を出てきてしまうことも。ベッドや布団の周りにサークルを設置するなどの対策がおススメです。最初は真横に座って見守っているけれど、3日ごとにだんだんと距離をとり、最後は部屋の外から見守るというやり方でもOKです。

定期的に部屋に行って様子を見る

赤ちゃんをベビーベッドに寝かせたら、「おやすみ」と声掛けをして、時間を決めて定期的に様子を見に行きます。赤ちゃんが泣いたりぐずったりしても、決めた時間まで部屋に行かず、決めた時間になったらトントンしたり、声を掛けてあげたりして、安心させてあげましょう。このとき、すぐに抱き上げる、授乳をするはやめましょう。

定期的がどれだけの時間を指すの?と気になりますね。でも、定期的の明確な決まりはありません。赤ちゃんの様子を見ながら、少しずつ時間の間隔を空けていきましょう。

この方法だと赤ちゃんが泣いていても待っていないといけないので、赤ちゃんの泣き声を聞いているのを辛く感じることがあります。でも、大切なのは、決めた時間を必ず守ること。すぐに手を出さずに赤ちゃんの様子を見るのが大切なポイントです。

少しずつ間隔を空ける

泣いたらすぐに抱っこしたり、寝かしつけのためだけに授乳したりしてしまうと、赤ちゃんにとってはそれが習慣になってしまいます。赤ちゃんを寝かせたら、初めのうちはこまめに様子を見に行きましょう。最初から長時間一人で寝かせるのではなく、ネントレを始めて間もないうちは、数分置きにそっと様子を見に行き、赤ちゃんが安全に寝ているか確認します。慣れてきたら、少しずつ、赤ちゃんを見に行く間隔を長くしていきましょう。

ネントレは夜泣きに効く?

ネントレをすることで、赤ちゃんの夜泣きが減り、睡眠の質が上がると言われています。また、ママパパの睡眠時間が確保できるようになるという嬉しいメリットもあります。

ネントレはお昼寝でもできる?

赤ちゃんの頃はお昼寝が足りない子が多いので、お昼寝での寝すぎを心配しなくても大丈夫です。基本、お昼寝は、赤ちゃんがしたいだけさせてあげましょう。ただし、お昼寝は夜の睡眠にも影響するので、お昼寝時間も調整しましょう。お昼寝しすぎて夜に眠れなければ、午後のお昼寝の時間を早めるか、少し早めに起こすようにしましょう。生活音のある、明るい部屋でお昼寝をさせましょう。

ネントレで泣き止まない時は?

赤ちゃんが泣き止まない。まずは赤ちゃんの様子をチェックしましょう。特に問題なさそうなら、数分待ちます。赤ちゃんが空腹やおむつの不快感で泣いているのか、寝る前でグズっているのかを見極めましょう。泣いても基本はすぐに手を出さず、一時的に様子をみます。

グズっているだけなら、そのうち自然に泣き止んで寝入ってくれるかもしれません。泣き止まなくても抱っこするのではなく、ベッドの上でおなかをトントンしたり、やさしく子守唄を歌ってあげたり、抱っこしながら歩いてあげるなどして、赤ちゃんが落ち着くのを待ちます。すぐに抱き上げる、すぐに授乳はしないでおきましょう。

赤ちゃんは、まだ寝ることを練習している最中です。無理をせず、機嫌の良いときにネントレを試してみましょう。また、ママパパの「ネントレをやる!」と言う固い決意が大切です。そうしないと、赤ちゃんは長い間泣いたら、ママパパが自分のところに来てくれると思い込んでしまいます。

睡眠環境や生活リズムをしっかり整えてあげれば、夜泣きはかなり減るはず。ネントレを始める準備をしっかりしていれば、ネントレはスムーズに行くはずです。

よくある質問

日本やアジアでのネントレは、親子が良い睡眠を取れるようにするための睡眠環境づくりや昼寝のタイミング、起床や就寝時間などの生活リズムを整えることを指します。

まとめ

ネントレをいつから始めるかは、赤ちゃんの成長や成長スピードによって違います。ネントレを始めたら赤ちゃんの様子がおかしくなった、どうも親にも赤ちゃんにもネントレが合っていない、と思えば、無理に続ける必要はありません。家庭の状況に合わせて、ネントレが必要だと感じた時に始めればよいでしょう。生後何ヵ月になったから、と無理にネントレをする必要はありません。

ネントレには赤ちゃんが慣れるまでに泣き続けてしまい、ママパパが罪悪感で辛くなったり、ストレスを感じるいうデメリットもあります。ネントレの目的は、赤ちゃんとママパパがぐっすりと眠れて、快適な生活を目指すこと。赤ちゃんの成長やそれぞれの生活に合ったスタイルで、ゆったりと進めていきましょう。赤ちゃんと一緒に楽しむ気持ちで、ネントレを試していきましょう。

本記事の内容について 本記事に掲載されている情報は、信頼のおける医療機関や政府機関からの情報にもとづいたものです。 参考及び参照のリンクにつきましては、以下をご参照ください。また、掲載された内容につきましては十分な注意を致しておりますが、医療従事者などの専門的な意見に取って代わるものではありませんので、ご注意ください。 診断や治療法につきましては、必ず 医療従事者などの専門的な意見を聞いていただきますよう、お願い申し上げます。

About 杉山 剛

静岡県裾野市出身。 1998年に山梨医科大学(現山梨大学医学部医学科)卒業後、同年5月に山梨大学医学部小児科入局。以後、山梨大学医学部救急部、山梨県立中央病院NICUなどの勤務を経て、2009年11月 山梨大学医学部小児科学講座助教、2014年6月 山梨大学医学部小児科講座学部内講師を担当。2017年4月より社会医療法人杏嶺会一宮西病院小児科部長を務めた後、2023年7月に日本初となる小児の睡眠とアレルギーの専門医院である「尾張こどもの睡眠・呼吸・アレルギークリニック」を開業。 受賞 ...

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