産褥期とは?

産後、妊娠出産という大仕事を終えたママの体が妊娠前の状態に回復することを産褥と呼びます。ママが妊娠前の体に戻るまでの期間を産褥期と呼び、産後6~8週間くらいの期間が該当します。

産褥期のママは、嬉しいことや悲しいこと、感情面で多くのことを経験します。また、赤ちゃんとの新しい生活や産後の体の変化も経験します。

産褥期のママが経験する体や感情の変化、赤ちゃんとの新しい生活について、詳しく見ていきましょう。また、産後うつや産褥期の性生活、産後の月経開始、産後健診や産褥期のママが気をつけたい症状も併せてご紹介しています。

産褥期とは?いつまで続くの?

出産後、約6~8週間を産褥期と呼びます。但し、ママの妊娠の経過や出産後の状況により、産褥期の期間は長くなることがあります。

産褥期はママの体が妊娠前の状態に戻る期間を指します。また、親として新しい環境や生活に精神面で慣れていく時期でもあります。

産褥期にはどのようなことが起こるのでしょう?産後のママにどのような変化が起こるかをご紹介します。産褥期のママが経験することを知り、問題なくサポートしてもらえる体制を整えておきたいですね。産後にママの気分がすぐれず、不安や心配なことがあれば、お医者さんや保健師さんに相談しましょう。

産褥期のママの体の変化は?

出産後、ママの体は多くの変化を経験します。 出産後のママの体に起こる変化をまとめました。

産後、2~3日

待ちに待った赤ちゃんにようやく出会えましたね!赤ちゃんにおっぱいやミルクをあげ、たくさんのスキンシップ。ママの体は分娩や出産と言う大仕事から回復しつつあります。

産後2~3日のママの体には以下の変化が見られます。

  • 悪露(おろ):出産後、子宮から排出される粘液、血液、分泌物を悪露と呼びます。産後2~3日は量が多く血液も混じっていますが、徐々に量は減り、色は茶色や黄白色に変化していきます。母乳育児のママの場合、子宮が収縮するので、出血が多いと言われています。出血量が多いときは専用の産褥パッドや産褥ナプキンを使い、量が少なくなってきたら生理用ナプキンを使うとよいでしょう。

  • 子宮の収縮:産後10日程して子宮の収縮を感じることがあります。これは、大きくなったママの子宮が出産直後から急激に元の大きさに戻ろうと収縮を始め、元々あった恥骨付近に戻ろうとするためです。痛みがありますが、まもなく消えるので心配ありません。痛みが辛い時には、痛み止めをお医者さんに処方してもらいましょう。

  • 会陰切開の傷: 経膣分娩 のママは、赤ちゃんが出てきやすいように会陰切開を行ったかもしれません。会陰とは肛門と腟孔の間の部分で、会陰切開をした後は縫合をします。約3週間で治りますが、産後1ヵ月ほど痛みを感じるママもいます。産後1ヵ月健診で異常がないと診断されれば、安心です。産褥期には会陰切開の縫合部の腫れがひかず、痛みを感じるママは多いですが、これは会陰周辺の皮膚や組織、筋肉が回復しようとしているためです。裂けた程度や痛みに応じて、お医者さんが痛み止めを処方してしてくれます。 会陰切開の後は、なるべく痛まないようにゆっくりし た動きを心がけましょう。

  • トイレが近い、排尿時の痛み:ママは経膣分娩で出産しましたか?分娩中、赤ちゃんの頭がママの膀胱や尿道をずっと圧迫していました。この影響で産後、排尿時に痛みを感じたり、おしっこが出そうなのに出ない、と言う症状が出ることも。おしっこをする時に膣に温かい水をかけたり、水分を十分に取ることで痛みが和らぐと言われています。

  • 足のむくみ枕などを使って足を上げ、血行を良くすることが足のむくみにいいと言われています。まずはやっても問題がないか、お医者さんに聞いてみましょう。お医者さんの許可が出たら、ママの体調に合わせて、無理のない範囲でやりましょう。

  • 便秘:痛みのせいでいきめない、手術や痛み止め薬の影響で腸の動きが遅くなると言うこともあります。便秘になったら、歩いて体を動かし、果物や野菜などの食物繊維を多く含む食材を食べ、水分の摂取を積極的に行いましょう。

  • おっぱいの張り:産後2~3日におっぱいが重たくなったり、パンパンに張ったり、敏感になったりすることがあります。これは母乳が作られていると言う証拠。赤ちゃんに母乳を飲むリズムができてきたら、このような不快感はなくなります。ミルク育児の赤ちゃんの場合、おっぱいの張りは、産後7~10日で消えていきます。体に合ったブラやゆったりとした服を着たり、胸冷却シートを使ったりすることで、おっぱいの張りは治まります。ただ、痛みを無くすために搾乳するのは止めましょう。搾乳するとより多くの母乳が作られるので、おっぱいの張りが長引いてしまいます。

産後、2~3ヵ月

妊娠中や分娩中、ママの体は多くの変化を経験しました。出産後、ママの体が元に戻り、回復するには十分な時間が必要です。出産したからと言って、必ずしも全てが妊娠前の状態に戻るわけではありません。赤ちゃんが生まれて、生活リズムも変わります。徐々に、新しい環境に慣れていきましょう。

  • 疲れやすい:産後2~3ヵ月の間、ママは疲れやすくなります。妊娠中、ママは精神的にも肉体的にも多くの変化を経験しました。産後は休む間もなく、授乳やおむつ交換などをやらなければなりません。ゆっくりと眠ることができなくなるので、ママが疲れやすくなるのは当然ですね。疲れやストレスを減らすには、赤ちゃんが眠っている時にママが一緒に眠るのがいいアイデア。また、周りの人にサポートをお願いし、できるだけ友人や知人を招待するのは控えましょう。たんぱく質や鉄分の豊富な食生活を心がけ、家事は必要最低限にすませても大丈夫です。皿洗いは後回し、食事は他の人に任せ、宅配をお願いしてもいいでしょう。産褥期はママ自身と赤ちゃんのお世話を優先しましょう。

  • 汗をかきやすい:産褥期にはホルモンバランスが変化します。特に夜には汗をかきやすくなります。やがて症状は治まっていきますが、眠る時には布団が濡れないように、体の下にタオルを敷くのがおススメです。また、汗をかいたらシャワーを浴びて清潔を心がけましょう。心配なことがあれば、お医者さんや保健師さんに相談しましょう。

  • おなか周辺の変化:産後、すぐにママのおなかが凹むわけではありません。下腹部の筋肉が妊娠前の状態に戻るには時間が必要です。 妊娠中に腹直筋離開を経験するママもいます。これは左右の腹直筋をつなぐ真ん中の部分(白線)が、横に薄く伸びて広がってしまい、産後も元に戻らなくなった状態です。

  • 妊娠線妊娠中に妊娠線ができてしまうママもいます。完全には消えないかもしれませんが、時間とともに薄くなっていきます。

  • 抜け毛:産褥期に抜け毛を経験するママも多くいます。ホルモンバランスが落ち着くと、抜け毛もなくなります。産後の抜け毛 でご紹介しています。

  • 体重の減少:出産後、ママの体重は6kgほど減少します。これは赤ちゃんや胎盤、羊水や血液がママの体から出ていくことが理由です。この後さらに2kg以上体重が減りますが、皮下脂肪があるので、分娩後 2~3 ヵ月では、多くのママの場合、妊娠前に比べ て3~4kg増えたままです。妊娠中にママの体重が増加する 原因は、皮下脂肪だけではなく、赤ちゃんや胎盤、羊水だと言うことを覚えていますか?産後、健康的な食生活や体に負担をかけない運動をすることで、妊娠前の体に早く戻ることができます。ママは焦らずに、もうしばらく頑張りましょう。早く妊娠前の身体に戻りたいと思うママもいるでしょうが、産後は食べる量を減らす時期ではないと言う専門家もいます。分娩や長い妊娠期間からの回復のために、ママの体は多くの栄養を必要としています。産後太りが気になるでしょうが、まずはママの体を労わり、栄養をつけましょう。健康的な食生活は、母乳の分泌量に影響します。母乳育児のママは、急激に体重が減少しないように気をつけてください。産後、ゆっくりと安全に体重を減らす方法をお医者さんに聞いてみましょう。

  • 尿漏れ:出産後に尿漏れを経験するママは多いです。経膣分娩や大きな赤ちゃんを出産したママの場合、特に尿漏れを経験するリスクは高いです。ケーゲル体操 はご存知ですか?尿道、肛門や膣あたりの骨盤底筋をギュッと閉めたり、緩めたりする妊娠中と出産後におススメの運動です。尿漏れ対策として試してみましょう。尿漏れの症状が改善しない場合、お医者さんに相談しましょう。通常、尿漏れの症状は3ヵ月位で自然になくなっていきます。

  • 便失禁:便のコントロールが上手くいかない状態のことです。産後、自分の意思とは関係なく、肛門から便が漏れることがあります。分娩時、ママの骨盤内の臓器や周囲筋肉を押し広げて赤ちゃんが通過していくので、骨盤内組織や直腸周辺の筋肉や神経がダメージを受けることが原因です。便失禁の症状が出たら、お医者さんに相談しましょう。お医者さんがママの症状にあった治療法を勧めてくれるでしょう。

  • 痔の症状:妊娠中に静脈瘤や痔の症状が出たママは、出産後にこれらの症状が悪化することも。妊娠中にこれらの症状がなかったママは、出産時のいきみが原因で、出産後に痔になってしまうことがあります。 分娩後 1~2 週間で治るケースがほとんどですが、心配なら肛門科のお医者さんに診てもらいましょう。お医者さんがママの症状にあった治療法を勧めてくれるでしょう。

産後の体の変化に慣れていきましょう

妊娠中のママの体は多くの変化を経験してきました。産後の産褥期にも同じく多くの変化を経験します。産後、ママはまず自分の体を労わってあげましょう。赤ちゃんは時間をかけてママのおなかの中で成長してきました。その間に時間をかけて、ママの体は変わってきました。赤ちゃんが生まれた後も、妊娠前の元の体に戻るには時間が必要であることを覚えておきましょう。

バランスの良い食生活を心がけ、体に負担をかけない運動をやってみてください。赤ちゃんのお世話だけでなく、自分の時間も必要ですし、自分を労わることも必要です。産後のママはやることが多くて大忙しです。時間をかけてゆっくりと妊娠前の体に戻していきましょう。

新しい生活に慣れていこう

赤ちゃん生まれてから、ママの生活はガラリと変わったことでしょう。新しい生活を楽しむママもいれば、昔の生活が良かったと思うママもいるはず。一番多いのは、喜び半分、寂しさ半分のママではないでしょうか? まずは今の状況を受け止め、前向きに考えてみることが、親としての新しい役割を成功させるための大切なステップです。

待ちに待った赤ちゃんとの生活。でも、嬉しいとか喜びだけではなく、ストレスや疲れを感じることもあります。ママの体や心のケアは非常に大切です。

だから、何もかも一人で抱え込まず、できるだけママの負担をパパや他の家族とシェアするようにしましょう。ママが頼めば、喜んで食事を作って持ってきてくれるお友だちもいるでしょう。ミルク育児なら、夜の授乳をパパに頼むこともできますね。

慣れない夜の授乳やおむつ交換。ママがイライラしたり、ストレスや不安を感じることもあるでしょう。ママのそんな気持ちをパパや家族の人とシェアしましょう。気持ちを伝えることで、ママの気持ちが軽くなりますね。

子育ての最中に一人になりたいこともあるでしょう。そんな時には、赤ちゃんをベッドに仰向けに寝かせて、少し部屋を離れてみましょう。そして深呼吸して、10数えてみてください。 赤ちゃんが泣き止まなくてもしても、決して揺さぶってはいけません。

ママがストレスを感じた時、発散するための方法を考えておきましょう。パパや家族、お友だちやかかりつけのお医者さんに相談してみるのもいいでしょう。住んでいる地域の子育てサポートサービスを受けることもできます。育児サポートについて、住んでいる自治体に問い合わせてみましょう。

産褥期のエクササイズ

子育てで忙しく、疲れているママ。そんな時でも体を動かすことで、元気が出てくることがあります。エクササイズには妊娠や分娩で伸びてしまった筋肉や関節を元の状態に戻したり、血液の循環を良く して子宮の回復を促すと言う嬉しい効果もあります。

出産後、すぐに妊娠前にやっていたような本格的なエクササイズをするのは、ママの体に負担がかかり過ぎます。出産は思った以上に体に大きな負担をかけています。少しずつ体を動かしていきましょう。

経膣分娩のママは、決して無理をしないで自分のペースで体を動かすようにしましょう。帝王切開 のママは、回復に4~6週間が必要です。いずれの場合も、お医者さんの許可が出てから、無理のないエクササイズから始めましょう。

まずは、ウォーキング、水泳、産褥体操のクラスへの参加などを考えてみましょう。体重を減らす、昔履いていたジーンズを履けるようにする、などを目標としたエクササイズはダメです。産褥期は子育てに必要な体力の回復、健康でいることを目標としたエクササイズから始めましょう。

まずは、妊娠中に緩んでしまった背中とおなかの筋肉から鍛えていきましょう!お医者さんや助産師さんの許可が出たら、以下のエクササイズを試してみましょう。

まずは上の図解と下の解説を参考にして、体を動かしてみましょう。20回ほど繰り返しましょう。

エクササイズをする際の注意:必ず腹筋を使い、深呼吸をしながら、体を動かすようにしましょう。体を動かす時には、背中が完全に床についているようにして、負担がかからないようにしましょう。

  1. 四つん這いの姿勢:手と膝を床につけて四つん這いの姿勢になります。この姿勢で深呼吸を繰り返し、腹筋を鍛えます。

  2. 足をスライドさせる運動: 仰向けに寝転がって両膝を立てましょう。息を深く吸い込みながら腹筋を使って片足をまっすぐに伸ばし、もう一方の足を床でスライドさせます。次に息を吐きながら、スライドさせた足を元に戻し、今度はもう一方の足で同じ動作をします。これを交互に繰り返しましょう。

  3. 膝を高く上げる運動:寝転んだ状態で両膝を立て、片方の膝を曲げながら高く上げましょう。もう片方の足は真っすぐの状態です。この状態で自転車を空中でこぐ動作を繰り返しましょう。

  4. かかとタッチ:床に仰向けに寝転んで、膝を曲げ床と平行な状態にキープします。一方の足のかかとを床にタッチしてまた平行な状態に戻す動作を、片足ずつ繰り返します。両足のかかとを同時に床にタッチすると難易度があがります。背中を床にぴったりとつけておくのがポイントです。かかとを床にタッチするとき背中が痛むようなら、タッチする直前で足を戻しましょう。

  5. 足のストレッチ:仰向けに寝転びます。ふくらはぎを床に平行な状態にして、両足をお尻の上まで上げましょう。片方の足を斜めに床から少し上げた真っすぐの状態で止めましょう。もう片方の足でも交互に繰り返しましょう。

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職場復帰について

ママが職場復帰する理由は様々です。妊娠中は職場復帰を考えていなくても、生活環境や状況の変化、心境の変化が復帰を考えさせるのかもしれません。焦らずに、ママの気持ちを整理していきましょう。

労働基準法では、産後休業と育児休業について定めています。産後休業は、出産の翌日から8週間(56日)は必ず休業するという決まりで、働くことはできません。でも、産後6週間(42日)を過ぎた後、働きたいという本人からの申し出があった場合には、医師からの許可があるという条件付きで働くことが認められます。育児休業は、子どもが1歳になるまでの間で希望する一定期間、育児のために休業することができ、子どもを保育所に預けられないなどの事情がある場合には、1歳6ヵ月までの延長も可能だと定められています。2017年10月からは制度が変わり、1歳6ヵ月時点でも事情によっては、再申し込みをすることで、最長2歳 になるまで休業を再延長できるようになりました。

小さな子どもの場合、急な発熱や体調が悪くなることはつきものです。職場復帰をする時は、会社の介護休暇制度や時短制度、どのような育児サポート制度があるかも確認しておきましょう。

ママの職場には、搾乳スペースはあるでしょうか?自主的な取り組みで、搾乳スペースを設置している企業もあります。確認しておきましょう。

共働きのママパパの場合、子どもが突然に病気になっても、どうしても会社を休めないと言うような状況が出てくることも。サポートしてくれる家族や友人、ファミリー・サポート・センターや産後ヘルパーなど、地域ごとの子育て支援サービスやかかりつけ医などを事前に確認しておきましょう。

マタニティーブルーズとは?

出産後は幸せな気持ちになるものですが、情緒不安定になったり、落ち込んだりするママもいます。ママの25~50%くらいがマタニティーブルーズを経験すると言われています。

赤ちゃんが生まれたのに気分が落ち込んでいるからといって、悪いママだと言うわけではありません。産後のママのホルモンバランスやママの体の変化、育児の疲れが原因で、気分が落ち込むことがあると言われています。ホルモンバランスが戻り、赤ちゃんとの生活に慣れてきたら、このような感情はなくなっていくでしょう。

たまにはパパに育児をお願いして、ゆっくりと眠ったり、外に出たりして自分1人の時間を作ってみましょう。ママの気分が解消されること間違いなしです。

マタニティーブルーズは一時的なもので、数日したら消えていきます。でも、気分の落ち込みが続く、食欲がなくなる、眠れないなどの症状が1ヵ月以上も続くようであれば、産後うつ のことも。ママが産後うつかもしれない、と感じたら、お医者さんに相談しましょう。

出産後、月経の再開はいつから?

分娩後、子宮から分泌物が排出されます。最初の3~4日は血が混じっていて、量も多いです。これは悪露と呼ばれるもので、生理とは違います。

母乳で育てているママの場合、母乳の分泌を促すホルモンが排卵を抑えるので、月経の再開は遅くなるのが一般的です。でも、授乳をやめる と、ほとんどのママの場合、6 週間以内に月経が再開します。授乳をしていない、ミルク育児のママの場合は、産後2~3ヵ月で月経が始まることが多いです。

月経が再開しても、最初のうちは妊娠前の月経と少し違うと感じるママもいるでしょう。月経期間が長くなったり、短くなったり、生理痛が和らいだり、周期が不規則なこともありますが、徐々に妊娠前の状態に戻っていきます。

月経が再開していなくても、卵巣から排卵していることもあります。つまり、月経が再開していなくても、妊娠してしまう可能性もあるので、避妊をするようにしましょう。 避妊方法については、お医者さん、保健所や市町村保健センターの保健師さん、助産師さんに相談してみましょう。

産後健診とは?

分娩方法に関係なく、通常、産後2週間健診と産後1ヵ月健診があります。基本的にはママの心と体の状態、赤ちゃんの体重や授乳の状態を確認します。ママの場合、尿検査、体重や血圧の測定があります。慢性糖尿病のママは、追加で血糖値検査を受けることもあります。

出産後に家に戻り、赤ちゃんと一緒に過ごすママに疑問や不安などが出てくる時期ですね。安心して育児に専念できるように、ママの体のことや授乳のこと、子育てについて疑問に思ったことを何でも聞いてみましょう。予め不安や質問事項をリストにしておきましょう。

産褥期に起こりやすい病気は?

産褥期のママが気をつけたい病気が幾つかあります。産褥期のママが経験する主な症状をまとめてみました。下の例以外にも、ママが気になる症状があれば、お医者さんに相談しましょう。

  • 妊娠高血圧症候群:妊娠時に高血圧を発症した場合、妊娠高血圧症候群といいます。妊娠前から高血圧の場合、または妊娠20週までに高血圧の症状がある場合を高血圧合併妊娠と呼びます。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類されます。妊娠高血圧症を発症したママの場合、次回の妊娠時にも再び高血圧を発症したり、将来、心臓血管の病気になるリスクが高いと言われています。かかりつけのお医者さんが産褥期の健康診断時にママの血圧を測ったり、治療法を説明してくれるでしょう。

  • 産後うつ:出産後、楽しいとか幸せに感じない、母親失格なのではないかと思ってしまう、理由もなく悲しくなったり、絶望的な気持ちや不安になったり。何事にもやる気が出ずに集中できない、赤ちゃんが横でぐっすりと眠っているのにママは眠れず、ベッドから起き上がれなくなってしまう。産後約2~3週間後、場合によっては産後1年過ぎてから、このような症状が出てくることがあります。ママが産後にこのような気持ちになったら、お医者さんや保健師さんに相談しましょう。

  • 分娩後子宮内膜炎:子宮内の感染症です。非常にまれな病気ですが、帝王切開分娩のママに発症するリスクが高いと言われています。帝王切開の場合、予防的抗菌薬を手術の60分前に投与することで子宮内膜炎のリスクを減少できると考えられています。分娩後、発熱や気分がすぐれない、子宮の痛みを感じたら、お医者さんに連絡しましょう。診断結果に応じて、お医者さんが抗生物質などを使って、治療してくれます。

  • 分娩後出血:分娩後24時間に発生する出血を分娩後異常出血、分娩後12週間の間に発生する出血を後期分娩後異常出血と呼びます。胎盤が出た後、24時間はまだ子宮が収縮が悪く、出血が起こることがあります。胎盤が子宮の筋肉の内側に入り込んでいる状態の癒着胎盤とは異なります。出産後のママの4~6%に、分娩後24時間以内に分娩後出血が起こると言われています。分娩後にこのような出血を経験したら、お医者さんが薬を使うか、子宮が収縮するように子宮のマッサージをしてくれるでしょう。大量に出血したら、輸血をされることも。産褥期に大量出血したら、すぐにお医者さんに連絡しましょう。

  • 産後[分娩後]甲状腺炎:分娩後2~4ヵ月、甲状腺が過剰に働き、その後に甲状腺の機能低下の症状を経験するママがいます。甲状腺の働きはその後に普通に戻りますが、まれに橋本病(慢性甲状腺炎)と呼ばれる生涯にわたり甲状腺ホルモンの補充が必要な病気を発症することもあります。疲れやすさや体重増加などの甲状腺の病気の症状を、産褥期の疲れやすさと間違えることもよくあることです。ママがいつもの症状ではない、症状が長い間続くなどと感じたら、お医者さんに診てもらうようにしましょう。

  • 妊娠糖尿病:妊娠中に糖尿病になってしまったママもいるでしょう。このような場合、お医者さんは褥期になっても定期的にママの様子を確認してくれます。通常、産後6-12週間後に再びブドウ糖負荷試験をうけ、妊娠糖尿病が治っているかどうかを評価します。産後に母乳で育てると、お母さんも赤ちゃんも将来、糖尿病になる可能性が低くなると言わているので、母乳育児を心がけましょう。

どんな時にお医者さんに診てもらうべき?

産褥期に以下のような症状が現れたら、すぐにお医者さんに診てもらいましょう。

  • 38℃以上の熱がある。

  • 吐気を感じる、嘔吐する。

  • おしっこをする時に焼けるような痛みがある。

  • 通常の生理よりも出血が多い。

  • 下腹部にひどい痛みがある。

  • 足のむくみ。

  • 胸の痛み。

  • 胸に赤い線が出たり、痛みのあるしこりがある。

  • 分娩時に切開した部分の痛みが悪化、そこから赤い膿のようなものが出る(感染症の可能性)。

  • 臭いのあるおりものが出る。

  • 理由もなく落ち込んだり、絶望的な気持ちになる。この状態が10日以上も続いている。

産褥期のママが困った時には誰に相談したらいいの?

赤ちゃんを育てるのには周りの助けが必要です。ママは1人で抱え込まないようにして、困った時にはパパや家族、仲のよいお友達の助けを借りるようにしましょう。もちろん家族やお友だちと会うのをストレスに感じるなら、会うのは控えましょう。

産褥期には、助産師さんやデューラのサポートを受けることもできます。ママが疑問に思うことに答えてくれたり、必要なアドバイスをもらうこともできますよ。

両親学級に通っていたママは、同じ経験をしているそこで知り合ったママ友・パパ友に相談してみてもいいですね。

お医者さん、保健センターや保健所で働く保健師さんもママの心強い味方です。地域の保健センターに連絡してみましょう。

よくある質問

出産後、約6~8週間を産褥期と呼びます。但し、ママの妊娠の経過や出産後の状況により、産褥期の期間は長くなることがあります。

おわりに

待ちに待った赤ちゃんにようやく会うことができました。育児を頑張るぞ、と思ってたのに、体がしんどくて眠れない、なぜかわからないけれど涙が出てくる、気分が落ち込んでしまう、赤ちゃんが可愛いと思えない。こんな風に感じるママもいます。出産直後のママは無理は禁物です。まずは自分の体の回復と赤ちゃんのお世話を優先しましょう。自分一人で頑張りすぎないで、パパや周りの人々、住んでいる地区のサポート制度を活用してくださいね。 栄養のあるものをバランスよく食べ、適度なエクササイズで元気を保ちましょう。

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